最近の分電盤は分電盤自身にアース線を繋ぐ構造になっています。
一昔前は、洗濯機、冷蔵庫などの必要な場所にのみアースが通線されていたようですが、現在は一度分電盤をアース線で接地し、接地が必要なコンセントは分電盤内で主アース線と接続して接地を取る構造になっています。
3心のケーブルなどで、一本が緑色(赤の事も多い)のアース線なのは、分電盤とコンセントをアースも一緒に繋ぐ為の構造なわけですね。
用語として、「接地」と「アース」は同義で、地中への電路という意味です。
電気機器はアースをちゃんととってないと、漏電時に感電事故などが発生する恐れがあります。
オール電化を目指して新しい分電盤を購入したものの、我が家の分電盤にはアース(接地線)が来ていないので、分電盤交換の準備として接地工事を行いました。
アースはなぜ必要なのか
電気は最も流れやすい所へ流れる性質があります。
水と一緒ですね。
抵抗とは中学校で習ったと思いますが、電気の流れにくさ。
電気は最も抵抗が小さく流れやすい所へ流れます。
アースとは、漏電したときの電気の逃げ道を抵抗の低い銅線で作ってあげているわけなのです。
漏電している洗濯機に触れてしまった場合、アース線があれば、人体の抵抗よりも断然抵抗が小さく電気の流れやすい銅線を伝って地面に電気が流れます。
しかしながら、アースがない場合、抵抗が高い人体を導線にして電気が流れ、手から心臓を通って足から地面に流れ、感電事故となるわけです。
人体の抵抗は約1000Ωと言われてますが、身体の小さな幼児の場合は当然抵抗も低く、大人の2倍3倍の電流が流れてしまうため、子供の感電事故の方が重大な症状になってしまいます。
小さなお子さんがいる家庭では特に、規定通りの接地を行いましょう。
接地線の選び方
接地にはA種,B種,C種,D種と4種類のランクがあり、A種が最も高圧の電路用の基準です。
A→Dの順で接地の基準が甘くなります。
A種、B種接地はビルなどの大型の建物でしか見ないものかと思います。
住宅では、300V以下の基準であるD種接地を施せばよいです。
ただし、0.5秒以内に自動的に電気を遮断できる漏電遮断器を取り付ける場合は500Ω以下に基準が緩和されます。
接地抵抗値とはどれくらい地面に電気が流れやすいかの数値。
抵抗値が低い程大地に電気が流れやすく、漏電時に地中に電気が逃げるため安全です。
接地線の太さの選び方
電気事業法上はD種接地は
「直径1.6mmの緑色の被膜の銅線を使用する事」となってます。
が、内線規定では
- 30A以下···直径1.6mm以上(2.0m㎡以上)
- 50A以下···直径2.0mm以上(3.5m㎡以上)
- 100A以下··直径2.6mm以上(5.5m㎡以上)
となっています。
内線規定とは、電力会社の民間自主規格で法律ではありませんが、電力会社としては「内線規定を満たしていないと電力は供給しません」という基準なので、内線規定を施工の基準にしましょう。
我が家の分電盤は漏電遮断機が75A容量なので直径2.6mm以上のアース線を選定します。
ちなみに、一般的には直径2.6mmの電線は5.5m㎡なので、5.5sq(スケア)と呼ばれます。
アース棒の設置基準
接地棒は、棒の頭が地表から75cmの深さに打ち込む必要があります。
「75センチって結構やばない!?」っていう感想を僕は持ってしまったのですが、この基準は特にA種、B種についての規定なので、C種、D種は特に明文化されているものは見つけられませんでした。
そして、接地極の打ち込みに適した場所は湿り気のある粘土質の土が最適。
住宅であれば、北側の家の影になる辺りが日陰の時間が多く、湿り気が多いのでアース設置に適しているはずです。
①銅板を使用する場合は、厚さ0.7mm以上、大きさ900c㎡(片面)以上のものであること。
②銅棒、銅溶覆鋼棒を使用する場合は、直径8mm以上、長さ0.9m以上のものであること。
⑤銅覆鋼板を使用する場合は、厚さ1.6mm以上、長さ0.9m以上、面積250c㎡(片面)以上のものであること。
-内線規定より-
推奨ではありますが、90cmってナカナカの長さ。
アース棒(接地極)の埋設のDIY
アース棒を地面に打ち込んで、そこからアース線を配線するのが最もDIYな訳ですが、アース棒を新設した場合、接地抵抗計という高額な機器で接地抵抗値を測る必要があります。
一発の測定の為に接地抵抗計なんて買ってられない!
節約の為にDIYやっとんじゃい。
と、思っていたのですが、職場で借りられてしまったので、穴堀してアース棒を設置することにしました。
アース棒の為の穴堀
接地極の埋め込みの深さの基準は75cm。
その基準はA種とB種の基準のようですが、D種の接地である我が家でも厳しい基準に準拠したい。
ということで、75センチ穴を掘ってみました。
結構しんどいです。
そしてこのアース棒を穴の奥底に挿す。
接地抵抗測定
接地抵抗測定にはE、P、C3つの端子があり、
- E端子はアース棒に接続
- P端子はE端子から5~10m離れた位置に補助接地棒を打ち込む
- C端子はP端子から更に5~10m離れた位置に補助接地棒を打ち込む。
その3つの端子を接地抵抗測定器に接続して接地抵抗値が計測出来るわけです。
日動電工さんのホームページが分かりやすいです。写真からジャンプします。
補助接地棒の埋め込み
この補助接地棒をアース棒から約10mの位置に一本、アース棒から約20mの位置に一本を土に差します。
土地が小さいので20mの距離は取れませんでしたが、この2本の補助接地棒でアース棒からどれくらい地中に電気が流れやすいかを計測します。
アース棒の接地抵抗値は122Ωでした。
- 100Ω以下
- ただし、0.5秒以内に電気を遮断できる漏電遮断器がある場合は500Ω以下
でした。
つまり、一般家庭には漏電遮断機は付いているはずで、我が家にもちゃんと設置してあるので、500Ω以下であれば基準はとりあえずクリア。
でもなんかちょっと納得がいかない。
『電気工事士かつ電気主任技術者である自分は、100Ωは切っとかないと妥協した感じになっちゃうんじゃないか?』
と、よくわからないプライドが邪魔をして、もうちょっと接地抵抗値を下げるために頑張ってしまいました。
接地極の並列接続
接地極を並列で埋め込むという並列接地に挑戦しました。
今回は、アース棒を新設した近辺に、洗濯機用のアース棒と、給湯器のアース棒を発見したので、そのまま新設のアース線と繋いで3本の並列にしてみました
洗濯機置場の壁の外側から建物内に入れられてました。
床下かと思ってましたが外にあるのですね。
ただ単にリングスリーブで圧着しただけです。
リングスリーブは必ず圧着工具を使用しましょう。
法令遵守です。
アース棒に2本のアースを並列で接続しました。
圧着端子用の圧着ペンチで接続していました。
近日中にやり直します。
黄色の握りのリングスリーブ用圧着ペンチを使わないといけませんでした。
接地抵抗値を再測定
3本アース棒を並列で接続した結果、測定値は66.4Ω!
見事100Ωを切りました。
分電盤へ繋ぐ用のアース線を接続
我が家の分電盤は75アンペアの漏電遮断器に交換するので、直径2.6mm以上(5.5m㎡以上)のアース線を、接地棒のアース線に圧着します。
最終的には分電盤内の端子に接続されます。
DIYで分電盤の交換。太陽光発電に向けて古い分電盤をスマートコスモに交換してみた。
D種接地にアース線の保護管は必要なのか
D種接地には必要ありません。
基準上はA種、B種接地工事は地下75センチから地上2mの間を人の触れないような保護をするように規定されています。
とはいうものの、緑色の線が壁を伝っているのも不恰好なのと、漏電時への念のためPF管を付けておくことにしました。
一応子供も小さいので安全に越したことはありません。
壁を這わず、外壁の中を通せれば一番良いのですが、断熱材のある外壁の通線は困難です。
考えてみれば、床下に潜り込んで、断熱材の無い内壁の隙間を通せばPF管も不要だったかもしれません。
PF管の太さにより、通線できる電線の太さ、本数が決まりますが、アース線一本であれば問題ありません。
僕は直径14mmのPF管をチョイス。
約5メートルのPF管にズボズボ線を通します。
あとはアース線の入ったPF管を室内に取り込む作業ですが、こちらの記事をご覧下さい。
以上、『DIYで接地棒(アース棒)の埋設。分電盤に取り込む為のアース線を設置しました。』でした。