息子たちの自転車置き場を作ろう。
と計画していたら、数寄屋造り風の木造軸組工法の駐輪場にしたくなってしまった。
「息子たちの為」という本来の目的は見失ってしまった。
もはやただの趣味だ。
ということで、前回刻んだ角材を組んでいきます。
駐輪場の柱を立てる
精度高く設置した羽子板付きの束石に柱を立てる。
奥側柱を先に立てておく。
事前に穴を加工していたので、M12サイズのボルトを貫通させて仮固定。
座金を噛ませてナットで締めます。
座金を入れることで、インパクトでガチガチに締めても木材に回転方向の力が当たらない。
強い引っ張り力でガッチリ固定出来るわけです。
軒桁と小屋梁を載せる
柱のホゾを軒桁のホゾ穴へ。
ノミで微調整しながら入れていきますが、微妙に入りづらい場合はホゾをトンカチで叩いて潰して挿し込む『木殺し』と呼ばれる方法もあります。
木殺しして挿した場合は、最後に濡れた雑巾で濡らしてあげると木が元の状態に戻ります。
腰掛蟻継ぎ部分もはめ込む。
最後は当て木をしてハンマーで押し込む。
しっかり刻んだので、ハメたらビクともしなくなりました。
棟木を乗せたら構造部分の完成
小屋梁と正面側の柱をホゾ接合。
美観のため、ここは貫通しないホゾにしました。
正面側の柱と棟木を接合したら軸組の主要な部分が完成です。
全部はまったら、正面の柱と仮固定していた奥側柱を束石にガッチリ固定します。
M12ボルトで固定するので、19mmのインパクト用ソケットが必要です。
90mmの角材を使っているので、110mmの六角ボルトを貫通して固定しています。
羽子板ボルトで固定
刻んだ木材をハメただけでは台風などがやはり不安なので、木材同士の接合部分を羽子板ボルトでガッチリ固定します。
ボルトが通る穴は木材を刻むタイミングで加工しておく必要があります。
小屋梁と柱、柱と棟木、軒桁をガッチリ固定します。
個数が業者なのでカインズホームPROで買いましょう。
ミスで開けた穴を樽栓で補修
羽子板ボルト用の穴を開けていたら、間違えて穴を開けてしまった。
悲しいですが、良くあることです。
この穴を同じ杉材で埋めます。
端材で先細りした棒を削り出します。
ダボを自分で作る訳です。
金槌で穴に打ち込みます。
ダボ切りノコでカットします。
埋まりました。
木目の方向が交差しているので少々目立ちます。
垂木の設置
事前に棟木と軒桁へは事前に垂木欠きを施しております。
が、微調整して全部の垂木が水平に納まるように頑張ります。
接する部分にビスを2本。
一本辺り計4本で固定。
垂木の長さは1820mmにしています。
畳の長辺も1820mmです。
屋根の長さを1820mmに設計すると、買ってきた材料が加工せずそのまま使用できることが多いので、作業が省エネ出来ます。
後で付ける野地板も、防水用のケラバ水切りもカットなしで使えます。
ビスだけでは不安なので、ひねり金物での固定をしておくと安心です。
小舞の取り付け
2650mm×30mm×40mmの角材を小舞として取付け。
小舞とはマイナーな部材ですが、垂木に対して垂直に取り付ける横木です。
構造的にはなくても良い部分です。
しかしながら、小舞を付けて屋根が横にせり出すケラバを大きめに作ると、屋根が少し浮いたような印象をもち軽やかな印象が出ます。
小舞があると野地板を縦に張れるので、意匠的にも好みです。
小舞を付ける際は、小舞と小舞の間の距離と同じ長さの木材を準備すると非常にスピーディーに作業が進みます。
交差点毎に65mmのステンレスのコーススレッドを2本づつ打って強度を確保。
空を眺めたら青い空。
野地板の取付け
ホームセンターで売っている一番幅広の野地板を貼っていきます。
野地板は下地材なので値段は安いです。
計4000円程度。
しかしながら、安い分加工が荒いため表面が結構汚い。
天井材の代わり使用するので、汚すぎる部分はカンナで軽く削ると美しい木目が顔を出します。
ちなみに、野地板は見栄えのためだけに貼っているので、駐輪場には無くても問題ないし、腐食の恐れが増えるだけなので省いても良いかもしれません。
小舞にビスで固定していくのみ。
野地板は1820mmなので、加工無しで貼り付けられます。
我ながら美しい仕上がり。
ずっとこのままでもいい気がしてくる。
ケラバ水切りの取付け
柱から野地板までオール杉材で作ってきましたが、長持ちしてほしいので、両端のケラバ水切りだけは付けておきます。
雨が木材部分を流れないようにするためのものです。
ホームセンターで700円程度。安い。
前後は屋根材を出して防水とするので水切り金物は付けません。
のぼり木の取付け
下地材として『のぼり木』を取付けます。
24mm×30mmの角材を使用。
横からビス固定
水の侵入がないよう、横からビスを打つのみです。
下地材ののぼり木に目掛けて。
まだ両端は固定しない。
端材の取付け
挿し込む。
その後横から一緒にビス留め。
中々悪くない。
屋根にオンデュリンをのせる
散々悩んだ結果、屋根は『オンデュリン』を載せることにしました。
オール杉材で組み上げて満足感でいっぱいになっていたところ、突然「そういえば安く駐輪場を作る為にDIYしてるんだった」と我に帰ってしまったのです。
立平葺でシンプルに決めたかったところですが、屋根材を本気で揃えると結構高額になってしまいます。
オンデュリンはアスファルト系の屋根材で、50年の耐久性を誇ります。
カインズホームで2000円で手に入ります。
安い!
屋根の横幅は2650mmで、水切りを付けたので約2550mmにオンデュリンを載せます。
3枚使用して、2山被せでピッタリでした。
オンデュリンは波板状で柔軟性があるので、数センチの誤差なら吸収出来るのも良いところです。
公式の横幅の表記も950mm(+/-3%)とされています。
小屋を作るのであれば、野地板にアスファルトルーフィングを敷いた上で屋根材を載せるべきですが、駐輪場なので野地板にそのままオンデュリンです。
屋根の防水処理はケラバ水切りとオンデュリンのみ。
オンデュリンに使用したビス
75mmのコーススレッドを約100本使用しました。
波板の山の部分が高さ38mm。
野地板の厚さが12mm。
小舞の厚さ30mm。
計80mm。
ビスを打つ位置をミスすると野地板から突き抜けます。
ステンレスよりもさびにくいこちらのコーススレッドを使用しました。
イオニスコートでさびにくい上に安い。
長さ68mmの防水キャップ付きの専用釘も売っています。
専用釘は少々高いのと、100本では微妙に足りないので通常のコーススレッドを使用しましたが、防水性を考えたら専用の防水キャップ付きの釘が良いかもしれません。
オンデュリンへのビス固定
波板の屋根材は必ず山の頂点にビスを打ちます。
谷の部分は雨が流れる部分なので、穴は開けてはいけない訳です。
オンデュリンは柔軟性のある屋根材なので、山へビスを強めに打ちすぎると潰れて横幅が拡がってしまいます。
少し浮かせて打って、位置決めをしてから固定するとズレません。
ビスを正確に垂木に当てるには
今回は小舞ですが、正確に下地材にビスが当たらないと、野地板を抜けてビスが剥き出しになってしまいます。
強度が保てない上にかっこ悪いです。
小舞が正確に取り付けてあるのであれば、一本づつメジャーで距離を測りながら打っていくとミスが起こりません。
下地までビスが届くと、オンデュリンはカチカチに固定されます。
火打梁の取付け
やはり柱と梁だけでは強度が不安です。
強風で倒壊しないように、後付けで火打梁を取付けました。
精度をシビアにしないと納まらないので少々難しい。
火打梁は水平方向の力で潰れないように補強するものです。
木造建築では5平米あたり一本の火打梁の設置がマスト。
45°のカットを多用するのできっちり作るのが中々難しい。
ボルトでの固定用に、溝の加工とボルト穴を開けておきます。
厚みがある部分で固定するため、写真のように穴を開けます。
インパクトのドリルで穴あけしているため、精度はあまり高くないので、貫通した部分に合わせて溝加工します。
この加工でボルトの固定ができるようになります。
角座金を納めるので、40mm四方の座金が納まるように。
ボルト固定用の溝は、ボルト穴が開いた位置に加工するとドリル加工の位置ズレの影響を最小限にできます。
受け側はこんな加工。
10mm彫りました。
受け側は柱から550mmの位置に設置する火打梁を加工していましたが、実際は20mm近くズレてしまったので、受け側は実物合わせで加工した方がよいです。
実物に合わせてピッチリ加工すると、入れるのも少々難儀するので、木材が傷つかないように当て木をして打ち込みます。
加工しておいたボルト用の穴にドリルで貫通させて、柱側にもボルト穴を作ります。
ボルトの位置は火打梁の先っちょではなく根本側で。
角座金を使用してボルト固定。
完成です。
火打梁で水平方向への強度は向上しましたが、鉛直方向の強度が弱いのでやはり方杖か筋交いが必要です。
方杖の取付け
火打梁を取付けた状態でも、やはり柱を押してみると結構揺れる。
台風怖い。
ということで、方杖を付けました。
やはり構造体に三角形の部分を入れると強度が跳ね上がリます。
通常の建築の場合は筋交いを入れるべきですが、基礎が束石のため筋交いは入れようがないため方杖です。
木材のサイズは火打梁と同一に。
ボルト穴の加工位置は、火打梁のボルトと干渉しないようずらしました。
小屋梁の同じ位置に集まる形にするため、火打梁と重なる部分はカット。
こんな感じの位置関係。一時的に火打梁を外して上にずらしてます。
キレイに納まって感動。
実際は同じ位置に切り欠きが重なると強度が落ちるので位置をズラした方が良いかもしれません。
見栄えを優先しています。
45度の角材を納める難易度の高さを実感して、大工さんの凄さが理解できる工程です。
こんな程度の駐輪場でも、強度が全く変わります。
強めに押すと5センチ位揺れてギシギシいってたのが、1センチ位しか揺れなくなります。
自転車置き場の完成
悪くない。
屋根に使ったオンデュリンも杉材の駐輪場の雰囲気とマッチしてなくもない。
基礎部分から作り上げてきたので中々の達成感です。
防腐剤入りの塗装も検討していますが、今の無塗装の状態が非常にキレイなのでこのまま経過を楽しみたいと思います。
火打梁と方杖は多少見栄えが悪くなるものの強度が雲泥の差なので入れましょう!
以上、『自転車置き場のDIY。木造軸組工法で組み上げる。』でした。