自転車置き場を作ろう。
そんなことを口走ったかと思いきや、一家の主がホゾ穴をノミで削りはじめたらどう思うだろうか。
きっと理解出来ないと思う。なんでだろうって思うと思う。
でも、やるからにはモノホンのクオリティを出したい。
そう思って時間を掛けてDIYに勤しみ、人に呆れられるのだ。
というわけで、自転車置き場を軸組工法で作ります。
といっても超シンプルな構造です。
材料は4メートルの90mm角の杉柱を4本使います。
前回は土台として束石を埋め、土間コン風に固まる土で基礎を作りました。
屋根の勾配を決める
屋根の勾配を決めなければ柱の高さが決められません。
普通の家は3寸勾配〜5寸勾配が通常のようですが、奥に向かって高さが低くなり過ぎても困ったものなので、2寸勾配の片流れ屋根にすることに。
軸組の結果はこんな様子。
小さな自転車置き場としては十分な勾配です。
軸組の各木材の名称
屋根を構成する木材の総称を小屋組と言いますが、各部の名称は写真の通りです。
ホゾ加工
柱と棟木、柱と軒桁(柱と柱を繋いで垂木が載る部分)の接合部分はホゾを貫通させて強度を保ちたい。
シンプルに前後30mmを切り欠いたホゾを作ります。
ホゾ加工には丸ノコ、丸ノコガイド、追入ノミが必要です。
190mmサイズが使いやすい標準サイズです。
ノミは24mm一本あれば多分大丈夫。
ホゾの墨出し
30mm幅×90mm長さのホゾを墨出し。
柱一周分墨出しします。
サシガネ必須です。
サシガネといえばシンワ測定がメジャー。
電ノコの刃の調整
切り欠きする部分の長さに合わせて刃の長さを調整します。
丸ノコで切りまくる
要らない部分を細くカットしまくります。
丸ノコガイドを使えばスムーズに直角に切込みを入れられます。
叩き落とす
こんな感じになったら、トンカチで叩きます。
縦の繊維が切られることで、キレイに要らない部分だけがカット出来ます。
カットする深さも、丸ノコの刃を出した分ピッタリの深さに出来るので、素人でも高精度のホゾが作れます。
現代の大工さんもこの方法でホゾを作るようです。
ノミで仕上げる
残った部分をノミで仕上げれば完成です。
ホゾ穴を彫る
ホゾ穴はノミだけでも可能ですが、ドリルで穴を開けてしまうとスピードアップ出来ます。
写真は、前面柱と小屋梁の接合部分のホゾ穴のため、貫通させずドリルを6センチ深さで開けています。
柱を綺麗に見せる為です。
テープは深さの目印です。
あとはノミで仕上げていきます。
貫通させる場合は、表裏から半分づつドリルを入れると位置ヅレが起こりません。
30mm幅のホゾ穴を作ってますが、24mm太さ程度のドリルがあるとベスト。
真ん中に穴を開ければ、左右に3mmづつ仕上げ用の余りが生まれます。
腰掛蟻継ぎの加工
柱と軒桁と小屋梁が直交する部分は、小屋梁と軒桁を腰掛蟻継ぎで接合します。
柱と軒桁はホゾの貫通で接合されるので、ここが一番加工がややこしい。
蟻加工で引っ張り力に耐えられる状態で、腰を掛けて荷重を軒桁に載せられる。
継手や仕口の基本的なもの。
実際はこんな形。
オス側はこんな形
腰掛蟻継ぎオス側
蟻部分の幅は根本が30mm、先端が44mm。
丁寧に墨出しし、ホゾを作るときと同様に下側の38mm部分は、柱太さの半分の45mm分を落とします。
蟻部分も可能な限り丸ノコで進めたいので、30mmいかない程度の深さで切込み。
縦にも切込みを入れます。
ここは丸ノコガイドが使えないのでフリーハンドで丸ノコ操作。
あとは手のこで落とせば完成。
思ったよりも簡単です。やれば出来る。
腰掛蟻継ぎメス側
きっちり墨出しします。
腰を掛ける部分を深さ8mm削ります。
丸ノコで切れ目を入れてノミで仕上げ。
合わせて、蟻部分も丸ノコでカットしておくと作業がはかどります。
最終的にはこんな感じ。
90mmの角材は細めの柱なので、ホゾ部分と蟻部分は繋げることに。
垂木欠き
垂木を置く部分は予め屋根勾配を配慮して棟木と軒桁を欠いておきます。
棟木の半分の位置から、屋根勾配と同じ2寸勾配で切り欠きます。
45mm×9mmの三角形を落とします。
ノコで切込みを入れる。
ノミで落とす。
棟木と軒桁へ同じ位置へ切り欠いていきます。
きっちり切り欠き出来たらこんな感じで垂木が納まります。
羽子板ボルトの下穴の加工
台風にもビクともしない自転車小屋を作るために羽子板ボルトの穴を開けていきます。
ネットショップだと個数が業者用なので、ホームセンターで購入した方がよいです。
インパクトドライバー用の19mmのソケットでM12ボルトが固定出来ます。
このように、羽子板ボルト自体を貫通させる穴と、羽子板ボルトを固定する穴の加工が必要です。
下穴は13mm〜14mmΦの大きさで開けます。
柱と軒桁 2箇所
柱と小屋梁両端 4箇所
計8箇所を羽子板ボルトで固定。
柱と束石ボルト、火打梁はボルトを貫通させて固定しています。
羽子板ボルトの穴の墨出し
羽子板ボルトはボルトの中心の高さが22mmなので、墨出しします。
加えて、羽子板ボルトを固定するボルト用の穴を開けます。
こちらの穴は購入した羽子板ボルトを実寸合わせで墨出しするのが良いと思います。
280mmの羽子板ボルトで90mmの角材を使った場合、接合部分から150mmの位置へ穴を開けるとちょうど良い。
角材に真っ直ぐ穴を開ける
穴をいかに真っ直ぐ開けられるかが完成度を決める勝負。
端材を使って垂直に穴を開ける為の治具を作りました。
杉の角材と板をビス止めしただけですが、杉の角材に体重を乗せて固定しながら穴あけ出来るので予想以上に便利。
火打梁と方杖の加工
柱と梁のみでは自転車小屋の強度に不安があります。
逆に、火打梁と方杖で補強すればかなり強度が上がります。
雲泥の差。
それなりに精度高く加工しなければ強度が上がりませんので、DIYで加工するのであれば、受け側の墨出しは現物合わせが良いと思います。
火打梁の墨出し
45°に線を引くには、サシガネの頂点からの長さが左右で同じになる位置で線を引くのみ。
10mm深さで柱に埋めるので、先端から14.1mmの位置からまた45°で線を引く。
カットしたらおしりから真っ直ぐ穴あけ。
反対側から出てきたところへ溝加工。
受け側はこうなります。深さは10mm。
受け側の墨出しは現物合わせで確認しながら加工するのがおすすめです。
角材の刻みは大変
2週間程掛けて完成。
ただのDIYオジサンなので、丸ノコやドリルで加工したホゾやホゾ穴でも、一個をキレイに仕上げるのにノミで1時間位は掛かってしまいます。
夜な夜な息子たちが寝静まった後にリビングでホゾ加工を続ける毎日。
ここを精度高く仕上げることで、組み上げるときはプラモデル感覚で楽しく作業出来るはずです。
以上、『木材加工篇。木造軸組工法で自転車置き場を作る。』でした。
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